いまどき、公立中学校のようすその2

 前回に引き続き、現在の公立中学校のことを書きます。

 今回は、高校入試に対して、重要な要素のひとつである評価基準について書きます。

 評価基準とは、いわゆる5段階評定のつけ方のことです。

 一般に5段階評定は、中間試験・期末試験等のテストでの点数でほぼほぼ決まっていると思われがちですが、東京都の公立中学校では、定期テストの点数に占める割合は主要5教科でも5割から6割程度、副教科と呼ばれる実技教科では3割程度しかありません。

 定期テスト以外での評価基準はとても細分化されており、1回で書ききれないため、今回は評価基準の2割から3割を占める「ふりかえり」について書きます。

 この「ふりかえり」については、保護者の皆さまからすると、自身での記憶はほとんどないと思います。ただ、小学校でも「ふりかえり」を行っているため、全く耳慣れないものではないとでしょう。

 「ふりかえり」の歴史を紐解くと明確にいつからというのは曖昧ですが、概ね
・2000年代  学習定着の補助として使用開始
・2010年代  総合的な学習や評価改革により影響が出始める
・2020年以降 観点別評価において、主体的な学びの姿勢として重視され、全教科に対して大きく影響

 ざっくり書くとこんな感じです。

 つまりは、「ふりかえり」の内容が点数化され、5段階評定に大きく影響が出るということです。

 まず、それぞれの「ふりかえり」について、A,B,Cの3段階に分かれます。実際には数値化されていますが、いくつにもある「ふりかえり」の個々には、A,B,Cとしか出ません。

A評価「十分満足できる」:目標に対する達成率80%以上
B評価「概ね満足できる」:目標に対する達成率50%以上80%未満
C評価「努力を要する」:目標に対する達成率が50%未満

 この文章を読むと、昔の小学校の通知表「あゆみ」にあった文章を思い出されると思います。

 たまに、小学校のときの通知表は、全部「十分に満足できる」だったのに、中学生になったら、5段階評定で4や5がとれないという嘆きを耳にします。

 実は、5段階評定においては、次のように定義づけられています。

「十分に満足できるうち特に程度の高いもの」達成率が90%以上
→ 5
「十分満足できる」達成率80%以上90%未満
→ 4
「概ね満足できる」達成率50%以上80%未満
→ 3
「努力を要する」 達成率20%以上50%未満
→ 2
「いっそうの努力を要するもの」 達成率20%未満
→ 1

 このように、A評価であっても、その達成度で、4と5に振り分けられます。
 そして、観点別評価の平均となるので、「ふりかえり」含めて、すべてのことが、
「十分に満足できるうち特に程度の高いもの」となる数値あるいは「十分満足できる」でも高い数値が必要となります。平均ですので、ときとして、B評価でも限りなく80%に近い数値があれば、5となる可能性も0ではありません。

 この観点別評価による、5段階評定の算出方法は次回書きます。

 話を「ふりかえり」にもどして、どのように書けると高評価になるのでしょうか?

 それについて、具体的に2つ挙げます。

 まず主要5教科のひとつである理科を例にします。
 理科の授業で「火山」についての授業があり、その授業に対しての「ふりかえり」を書かなければいけない場合

「火山岩のしくみがわかった。」
→ 何がわかったのかわからず、評価のしようがないので、C評価です。
出さないよりはマシなレベルです。

「火山岩はマグマが冷えて固まってできたものだとわかった。」
→ 授業を通して、あるいは教科書を読んで、主体的に学んだことが伝わるので、B評価

「火山岩は地表やその近くでマグマが噴出して急激に冷え固まってできた岩石であり、地下の深い場所でマグマがゆっくりと冷え固まった岩石が深成岩であることがわかった。」
→ 授業を通して学んだことに加え、教科書等を読んで、より主体的に学んだことが伝わるので、A評価

次に実技教科である保健体育を例にします。
保健体育で「短距離走」の授業が4回にわたってあり、それを各回その日のうちに学校貸与のPCを使って提出しなければいけないものの場合

「一生懸命頑張れたと思う」
→ 何を一生懸命なのかわからないため、C評価

「腕の振り方を意識して、一生懸命走ったらタイムが前回よりも0.1秒速くなった。」
→ 授業内で自分で意識して取り組んだことが伝わるので、B評価

「腕の振り方を意識したが、思うように腕がふれず、あまりタイムに変化が見られなかった。次の授業時までに、腕の振り方の動画を見て、さらにクラウチングスタートのフォームを意識して、頑張りたい」
→ 同一内容の授業が続く内容で、今回の反省と次回の授業に向けての目標設定まで書かれているのでA評価

 「ふりかえり」は自分を客観視し、反省と次につなげる行動を考えることなので、決して悪いことではないと思います。

 テストで点数をとることが得意な子を養成するだけの、既存の日本の受験システムを変える取り組みとしても良いと思います。

 ただ一方で、これが全教科にわたり数多く求められ、それが点数化されるという負担感がちょっとどうかと思います。

 「ふりかえり」は大切なことだと思いますが、点数化することについては、個人的には疑問視しています。

 ちなみに、私学では「ふりかえり」の数値化はありません。

 改めて、公立中学校は絶対評価です。過去においては、上位7%が5で、次の13%が4でといった相対評価の時代がありましたが、今はそうではありません。

 よく「近くの○○中は内申もらえやすい」ということから、高校受験へのシフトはどうかと相談されることが稀にあります。それはその中学校に通う生徒の取り組む意識レベルが高いだけです。絶対評価であるがゆえに、3割以上の生徒が5の評定が出る中学校もあれば、5の評定がほとんど出ない中学校も存在するということです。その子自身が、東京都教育委員会の定める評価基準に見合ったことができなければ、内申はもらえません。

 「知り合いの子で勉強があまりできない子が内申をもらって○○高校へ推薦で行けた」等は、テストの点数はとれなくても、今回挙げた「ふりかえり」行動等で偏差値ヒエラルキーとは別の評価基準でいけた場合です。

 中学受験を断念して、高校入試へのシフト、それもお子さまにとってもひとつの選択肢だと思います。ただこういった、現状の公立中学校のようすを理解し、納得した上での選択であって欲しいと思います。

 まだ続きがあります。

 次回は、今回、評価基準の一部として挙げた「ふりかえり」以外も含めた、評定の算出方法をご紹介します。


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