お子さまの中学受験を伴走する保護者にとって、成績不振であったり、お子さまの取り組み意欲の低さなどから、断念して地元の公立中学へと頭がよぎることがあるかと思います。
私の教室に通わせている保護者の方からも、その手の類いのご相談を受けることがあります。しかし、そこでよくよくお話を伺うと、現在の高校入試の仕組みをご存じでなかったり、あるいはご自身の高校受験のときの感覚で考えられていることが多いです。
いまどきの公立中学の評価基準であったり、学校生活について、今回からしばらく数回に分けて、書いていきたいと思います。
初回はいまどき公立中学校の部活動について、書きます。
今、公立中学校では、さまざまな面で、教員の働き方改革が推し進められています。
その一環として、教員の部活動への関わり方、またそもそも部活動のあり方が見直され始めています。
昔の感覚からすれば、どこかしらかの部活動に所属するというのが当たり前でした。
今は完全任意です。
もっと言えば、所属していても休むことも自由です。教員が強制的に参加することを強いることもできません。あくまでも課外活動なので、生徒の主体性を重んじる考えです。
「生徒の主体性を重んじる」
とても良いことで全国レベルまで行く部活動もありますが、一方で個人個人のやる気であったり、塾などが優先され、まともな活動ができていない部活動もあることも事実です。
ちなみに、部活動で部長を務めたりすると、内申に加点される時代がありましたが、現在は限りなく0に近いと考えてよいです。
都立高校入試では、完全に0です。
私立高校においても、一部の私学の推薦入試に加点されることはありますが、あくまでも3科、5科、9科に必要な教科内申に上乗せされるだけで、教科内申が足りなければ加点対象にはなりません。もちろん、スポーツ推薦だけは別物です。
部活動の指導といえば、教員が顧問となり、そして直接的に指導するというイメージがあるかと思いますが、指導は外部委託する方向に移行し始めています。もちろん、教員自身が積極的に指導に関わりたいという思いで、関わっているケースもありますが、勤務時間外は残業あるいは無給です。運動系部活だと校内だけの活動にとどまらず、土日の試合等の引率やその調整等で業務負担は計り知れないものになっていることに対する移行措置です。
今はその外部委託に移行している最中なので、委託先(指導員)が不足している状況もあります。指導員が何らかの理由で退職し、後任が見つからない場合は、部員が相応にいたとしても廃部になるケースもあります。
また、学校内での活動という垣根をこえて、地域で活動を行うということも始まりました。
板橋区を例に挙げると2025年4月から各中学校の野球部が学校管轄から地域管轄に完全移行しました。活動自体は基本学校で行われますが、規模の小さい中学校では隣接する中学校で活動する場合もあります。
板橋区は1985年時点で約19000人いた中学生が約20年で半分の約9000人まで減少し、その後20年は横ばい数値で現在に至ります。
1985年当時24校あった公立中学は2校しか減っておらず、比例して学校規模の縮小化により、学校部活動の持続可能の低下に備えたものです。
具体的には団体競技で必要人数が足らず大会に参加できないことを防ぐためです。
さらには、中学校の小規模化によって、必要教員数が減り、部活動の顧問のなり手不足を解消するための措置です。
直近20年のデータを見ると、実は板橋区在住の中学生の数は約12000人で推移しています。少子化の面というより私学への進学が大きな要因と考えてよいでしょでう。そして、私学の授業料実質無償化による中学から私学という流れが新たにでき始めています。
東京都は2030年までを目標に、この板橋区の野球部を地域活動に移行したように、中学生の部活動を学校活動から地域活動への移行を推進しています。
「部活動」=「学校活動の一環」
ではなくなる流れです。
もちろん悪いことばかりではありません。いいこともたくさんあります。
ただし、昔の感覚で部活動を位置づけることはできなくなる面も出てきます。
この是非は、個人個人の考え方だと思います。
部活動に比重を置いて、中学受験を検討されている場合には、このような変化も踏まえて検討すべきだと思います。
次回は、公立中学校の評価基準について、書きたいと思います。
受験サポート 進学教室アシストのコラムでは、受験生・受験生を持つ保護者の方に向けてお役立ち情報として公開しています。