今回は、80偏差の変動の仕組みとその理由について書いていきます。
6年生のお子さまがいる保護者の皆さまにとっては、ちょうど4月に行われた模試の結果が出て、合わせて80偏差一覧も公開され、受験校をどうしようかと思い悩むタイミングかと思います。
前回のコラムにも書いたように、この時期の模試結果は、週単位の学習を通して、弱点を減らしていく、すなわち、できることをひとつひとつ増やしていく、そしてできる問題の正解への処理速度を上げていく時期ですので、弱点であったり、できないことの発見材料としてとらえればよいと思います。
とはいえ、受験校をどう選定していくのかということに対して、よほど好結果でない限り、何も動かないというともどうかと思います。
そうなると、今まであまり気にしていなかった、第1志望校以外の併願校や抑え校の偏差値が気になり始めるところだと思います。
前回までのコラムでは、偏差値一覧に載っている学校の偏差値を固定的に書いていましたが、実際には微妙に変動します。模試における前年比・前回比でその学校の志望者数が増えれば、偏差値は上がり、減れば下がります。
各学校の偏差値は、一言でいうと人気のバロメーターです。
ただし、この人気とは、学校そのもののソフト面の人気だけではないということに注意が必要です。もちろん、大学進学実績が年々良くなっている等は学校そのものの人気です。
それ以外の代表的な要因として
① 前年の入試倍率
② 女子校あるいは男子校の共学化
③ 大学との提携による系属化
④ 交通網の整備による通学の利便性の変化
⑤ 学費実質無償化
といったものが挙げられます
①について、
・前年の入試倍率が高かった
→ 回避する動きが出て、80偏差は下がります。
・前年の入試倍率が低かった
→ 狙い目と思われ、80偏差は上がります。
3ポイント以上変化している場合は気にかける必要はありますが、
1、2ポイントの変化は誤差として考えるべきです。
気にするところではありません。
②について
ほぼ人気が上がります。
共学化に加えて、新校舎、制服刷新と揃うと不思議なもので5ポイント以上上がります。
過去の例を挙げると、
男子校から共学化で、明大明治、市川など
女子校から共学化で、広尾学園(旧順心女子)、三田国際(旧戸板女子)など
ただし、その動きにならって共学化しても人気が上がらなかった学校も存在するので
新たに共学化する学校に対しては、情報収集が必要です。
③について
これも人気の上がる要素のひとつですが、過去の状況を見ると一時的に注目され人気が上がったものの、数年後の結果として、期待とは異なる大学進学率で、下がってしまうケースが数校見られます。附属として期待するのであれば、偏差値云々とは別のことでしっかり情報収集する必要があります。
首都圏の中学入試は異常なくらいの過熱していますが、この国の抱える少子化問題で大学入試は国公立と人気私大を除いては、学校存続に必死です。そして、本当の学びを求める学生を優先するために推薦入試枠がどんどん増えています。この推薦入試のことはまた別の機会に書きたいと思います。
④について
ここ数年新たに新路線や直通運転が開始されたり等のトピックはあまりないので、気にされる方は少ないと思います。最近でいうと、多少郊外になりますが、相鉄線が東急目黒線とつながり、都営三田線や東京メトロ南北線にまで直通運転が始まりました。
もう少し前では東京メトロ副都心線が東急東横線と直通運転が開始され、もともと直通運転されていた東武東上線ともつながりました。
このような交通の利便性が上がると、学校の場所によっては、通学圏内が広がります。
具体例を1つだけ挙げると、慶應普通部でしょう。もともと難易度の高い学校なので、それに伴う偏差値の大きな変動はありませんでしたが、高校進学時に慶應志木を選択することもできるので副都心線内で慶應普通部の制服を着ている子を見かける機会が増えました。
⑤について
ここ数年で偏差値の変動が起きているのがこれでしょう。
実質無償化とは言っても、入学金や施設費等の費用はかかりますが、高校受験でかかる塾の費用を考えると、トータルの出費はちょっと多くなる程度ではないかと思います。
コロナ禍時に私学の行ったオンラインでの指導対応が評価され、コロナ禍前では、実質倍率が1.1倍くらいしかなかった学校が、2倍どころか3倍以上の倍率まで人気を集めているケースが多々あります。
四谷大塚Aライン偏差50くらい、SAPIX80%偏差で45くらいの元々ある程度人気のあった学校でもちょうど1倍分くらい倍率が上がった印象です。
以前であれば、中学入試を考えていなかったご家庭が、中学入試を検討する状況がおき、首都圏の中学入試は異常な過熱ぶりになっています。
あえて倍率という数値を出しました。
偏差値という指標のおかげで、その学校のレベルに見合った受験者層が集まり、その中での椅子とり合戦です。倍率が高くなるということは、受かりにくくなるという点ばかりに目がいきますが、学力が近い子どうしの試験です。
いろいろなレベルの子が受ける模試とは異なります。できる問題を確実に正解し、得点を重ねていく子が合格します。
まだ4月です。
偏差値という相対的な指標は伴走する保護者の皆さまは意識を置きつつも、お子さまに対しては、絶対的にできることを増やすことに目を向けさせるとよいと思います。
また、受験学年でない4,5年生は、間違えることも未来に伸びるための必要な要素です。どうすれば間違えないかという相談も良く受けるので、いずれ書く予定です。
4回にわたり、偏差値という数字をテーマに書いてきました。これ以上の内容は、この時期に書くことにあまりふさわしくないので、秋になったら、その続きを書こうと思います。
気になる数字他にもいろいろあると思います。
よくご相談に上がる数字や事柄を次回以降書いていこうと思います。
受験サポート 進学教室アシストのコラムでは、受験生・受験生を持つ保護者の方に向けてお役立ち情報として公開しています。