偏差値と上手につきあう

 数字は嘘はつきません。

 しかし、その数字に対して、誤った解釈をして、数字にまどわされる人が数多くいると感じています。

 そういった数字の中のひとつである受験に必ずついてまわる偏差値について、数回にわたり、いろいろ書いていこうと思います。

 まず、今回は
・偏差値とは何か
・偏差値を目標にすることの是非
                について

 まず、偏差値の歴史を紐解いていきます。

 高校受験において、1950年代頃まで前年度の合格者実績、その当該年度の在学生の中での個々の生徒の順位と全体の生徒数から、合格可能性を推測して進路指導が行われていました。

 この状況に対して、当時公立中学校の先生が、標準偏差(データの散らばりぐあい)という要素を入れた偏差値によって学力を測る方法を考案されたと言われています。

 これにより、変動する一回一回の試験の成績に惑わされることなく学力を比較し、入試に合格する確率を計算する目安ができました。これが偏差値の生まれたきっかけです。

 ただし、その当時は、偏差値を内密に使用し、生徒および保護者にも示すことはありませんでした。

 これは、偏差値を知能指数のように人間の能力を表示し、序列化するのに利用されるようなことを避けたかったからだそうです。

 その後に、テスト業者がその計算を代行するようになり、入試の難易度や合格可能性の判定をするのに広く使われるようになり、今に至ることになります。

 これにより、個人の序列化だけでなく、学校の序列化までができてしまい、偏差値ヒエラルキー全盛の現在です。

 もちろん、偏差値の存在がなければ、自分の立ち位置がわからず、どこが受かる学校なのかもわからない状況になってしまうので、受験においては必要なものだとは思います。

 ただし、試験を受ける母数が少ないテスト、あるいは範囲のあるテストにまで偏差値が導入されている現状は、さすがに行き過ぎな気がしています。

 受験で合格するためには、最終的には偏差値ではなく、学力です。
(高校受験においては、私学で併願優遇の資格を受ける際に、必要な内申を持っていない子が、業者テストの偏差値を使う場合もあるので偏差値は必要になってしまいますが、中学入試においてはほぼ関係ありません。)

 偏差値ばかりに目がいってしまい、習得しておくべきことが習得できているのかの確認や普段の勉強の仕方やテストの受け方の反省が甘くなってしまうケースを見かけることがあります。

 大事なことは、必要な学力を身につけ、それをテスト時にアウトプットできるかどうかだと思います。

 細かな計算方法の説明は、無駄に長くなるので避けますが、テストが行われて、それを受けたデータに対して、偏差値が決まります。

 平均値を偏差値50とし、データの散らばり具合によって標準偏差が算出され、個々の偏差値が算出されます。

 このとき、そのテスト問題が難しく、点数の散らばり具合が平均値周辺に集まっていた場合に高得点を出せば、高い偏差値が出ます。逆に問題が標準的な問題で、点数の散らばり具合が幅広かった場合に高得点を出しても、高い偏差値は出ません。

 より具体的に挙げれば、2回の150点満点のテストがあり、共に平均点が80点で、自分が得点したも120点であったとしても、その散らばりによって、偏差値は63であったり58であったりもします。低い場合でも自分の得点が40点であったとしても同様に、散らばりによって、偏差値は40であったり32であったりします。

 また、テストを受ける母集団の構成によっても偏差値は変動します。
SAPIX生を例にとると、通常受けるマンスリ-確認テストはSAPIX生しか受けません。ですが、SAPIXオープンをなると、他塾からできる子たちが腕試しに受けにきます。必然的に、受験者層のレベルが上がるので、普段通りの偏差値は出にくくなります。

 つまりは、日頃の積み重ねがきちんとしていて、できる問題をミス無く得点しても全体の散らばり具合や受験者層で、偏差値は変動してしまいます。
偏差値とは相対的なもので、予め何点とれば、偏差値がいくつになるということは決まっていません。(ある程度の予測はできるかもしれませんが)

 よく
「平均点くらいはとってもらいたい」であるとか、「偏差値55は合って欲しい」などの声を耳にします。1回の授業に対する確認テストのように問題内容やレベルが容易に推測できるテストであれば相対的なことも含めて目標にしてもいいかもしれません。

広い範囲のテストであったり、範囲のないテストでは、平均点や何点取れば目指す偏差値がとれるのかは事前にはわかりません。

 相対的なものを目標にするということは、見えない数字を目指すことになるので、すべての問題を解かなければいけないという意識が強くなり、テストの受け方が雑になる傾向があります。

 絶対的にできる問題をひとつひとつ正しく解答していけば、相対的な数字は放っておいても上がります。

結果として出てくる偏差値を無視すべきとは思いませんが、優先順位的には、テストをどのように受けてきたかだと思います。

「こんなに偏差値が乱高下するものなんでしょうか?」

 こんなことも良く聞かれます。
 精神的にも成長している高校生や中学3年生であれば、日頃の努力に応じた結果が出てきますが、そこはまだ小学生。。。。

 安定した子より、ぶれる子の方が圧倒的に多いです。特に男子はぶれます。

テストの解き直しを通して、何がよかったのか、何がいけなかったのか、それを次にどう活かすかを話することの方に意義があると思います。

 では、偏差値はどう使うのか?

 6年生の秋以降に受験校選定のために使います。
もちろん、その時期に至るまでの動向は、追っていく必要はありますが。。。

 その時期までは、お子さまにとっては、頑張るための励みにする数値です。

 お子さまの性格によっては、偏差値の動向がやる気につながる子もいるでしょう。
しかし、ほとんどの子どもたちは、良ければいい気分かもしれませんが、悪ければ気持ちが後ろ向きになるだけです。

 新6年生でも、まだまだこの時期は、励みにするための数値として考えていいと思います。励みになる数値でないときは、今後に向けての具体的な反省事項の洗い出しと学習計画を話してみることの方が意味ある時間になるでしょう。

そうはいっても、春休みが終わると、ほとんどの6年生が合格可能性の判定が出るテストを受け、合格可能性の数値と偏差値一覧を見ることになることになると思います。

 次回に、模試結果および偏差値一覧の見方、使い方について書く予定です。 

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